fineの視界

テーマ未定の雑記帳

保護

文章練習(創作)

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雨の中、小さく弱々しい声がした。

猫だ。段ボールの中、3匹の子猫がうごめいている。

誰かが残した傘が置かれていた。

この後の天気予報はどうだっけ? ひどくならないといいけれど。

そう思いながら、僕は家へ向かう。いつもより足取りが遅くなる。

僕は、拾えない。まだ子どもだ。育てられない。

家に着くと、逃げるように自分の部屋へ向かった。

母が心配している。

ああ、そうか。ただいまも言わなかった。

 

床に寝ころび、本を手に取る。

ページをめくるが、文字を追っても集中できない。

ぼーっとしたまま時間が過ぎる。

 

母がご飯ができたと僕を呼ぶ。

あの子猫らも、お腹を空かしているだろうと、やはり気になってしまう。

「後で食べる」と母に言い、傘をつかんで家を出た。

 

さっき子猫がいた場所へ。

しかし、もはやそこに子猫はいなかった。段ボールは残っている。

拾われたのだろうか。分からない。

辺りをウロウロと探しながら戸惑っていたら、見知らぬ子に声をかけられた。

どうやら、子猫らはちゃんと、誰かが保護してくれたらしい。

 

安心と同時に、どことなく、やるせなさが残る。

 

お腹、減ったな。

そう、僕もまだ子どもなんだ。

暖かいご飯が待つ家へ、僕は帰った。