fineの視界

テーマ未定の雑記帳

幸運

文章練習(創作) 連作:別目線

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揺ら揺らと、箱に入れられ運ばれている。

箱のずっとずっと上には、まだ薄暗い空が広がっている。

ゆっくりと箱が下ろされ動きが止まる。すると、急ぐように人影が走り去った。

辺りは静かで、しばらくすると、鳥のチチチという鳴き声が響き始めた。

 

日の光を感じたのはわずかな間だけだった。なんだか寒くなった気がする。

ぽつぽつと上からは水が落ちてきている。身体が濡れて、体温が下がる。

同じ箱の中の兄弟たちと、身体をくっつけ丸くなる。

心細い。不安。冷たい。お腹が減った。

そんな言葉は知らないのだけど、そういった感覚に包まれる。

 

お母さん! どこにいるの? ここだよ! みんなで呼ぶ。

 

しばらくすると、落ちてくる水がやんだ。

箱の上に、透明のキラキラ光るビニールが見える。

そこを水が跳ねたり伝ったりしている。

少しだけ、寒さが和らぐ。

でも、なんだか、鳴き疲れたみたいだ。

 

お母さん…早く来て… 小さく呼ぶ。

少し、眠くなってきた。

もう、あまり、声が出ない。

そのまま、意識が遠のいた。

 

 

 

……ふと気づくと、明るく暖かい、ふかふかした布の中にいた。

あれ? 初めて嗅ぐ匂いがする。

兄弟たちも、もぞもぞと動いて、起きだしているようだ。

 

「良かった! 大丈夫そうかな」

? 知らない声がする。高く柔らかい響きで、なんとなく心地よい。

 

「ちょっと待ってて!」

そのあとすぐ、おいしそうな匂いのするものが運ばれてきた。

ミルク!!

みんな、無心でペチペチコクコクと口にする。

お腹が満たされると、また眠くなってきた。

 

ここは広いの。だから、みんなで一緒に暮らそうね……

そう声がする中で、ぼんやりコテンと眠りに落ちた。